人2022.11.22
失敗はどんどんしてほしい!怖がらずにぜひ挑戦を。[前編]/沢根スプリング株式会社/沢根巨樹さん
浜松市南区にある「沢根スプリング株式会社」は、ばね専門メーカーとして1966年に設立しました。独自の生産システムとITを活用し、スピーディーに試作・少量品・量産品の製品を多岐にわたる業界に提供しています。
また、浜松のやらまいか精神で「考え・作り・売る」を実践し、品質と技術の向上に磨きをかけ続けています。
そんな沢根スプリング株式会社は、2021年8月にキャンプギアブランド「NORAHOLIC」を立ち上げました。ばね専門メーカーでありながらキャンプギアを製作した経緯や、異なる分野にチャレンジすることができる社風について、3代目社長である沢根巨樹さんにお聞きしました。
▲沢根スプリング株式会社 3代目社長 沢根巨樹さん
――ばねの専門メーカーでありながら、キャンプギアブランド「NORAHOLIC」を立ち上げたきっかけは何ですか?
キャンプ好きな社員の一声がきっかけです。「鉄やステンレスでばねを作る技術を活かして、キャンプギアを作ってみたい」という話があったので、「ぜひ、やってみましょう」と。何点か試作をしてもらい、売れる形になるまで製作をお願いしました。販売することが決まってからは早かったです。現在沢根スプリングのホームページを作っていただいている会社の社長もキャンプが好きで、以前からキャンプに関係する仕事ができたらいいねと話していたこともあり、販売用のショッピングサイト(※1)を作成していただきました。製造、ものづくりのことばかり行ってきた社員が、このようにキャンプギアを作ることによって、売るところまで責任をもってやらないといけない。そうすると、お客様と対話したり、外注先との打ち合わせをしたりしますよね。社員には、社外の人(広い意味で顧客)と触れ合う機会を持ってほしいと思っていたこともあり、人材育成を兼ねてスタートさせました。
▲沢根社長とキャンプギアを製作された外山さん(右側)
▲(写真上)本社ではキャンプギアの商品を実際に見ることができます。(写真中)「テーブル」と「薪スタンド」の2つの機能を併せ持つ組立式テーブル。(写真下)かまどをイメージした組立式焚き火台。
――キャンプ好きな社員発祥のブランドということで、どんなこだわりやコンセプトが込められているのでしょうか。
ショッピングサイトにも掲載しているメッセージですが、
「キャンプギアに求めるものは人それぞれ、考え方や使い方によってその価値は大きく変わります。そこで我々は、我々自身がいいと思う道具を提案します。それは外観、機能、コンパクト性、軽量、そしてVERSATILE(用途が広く融通がきく)という価値観です。あなたのバックパックの中に詰まったお気に入りの道具たち、その中の一つに加えて頂けたらと願っております。」
このコンセプトのもと、多用途に使えるギアを中心に設計製造しています。
――なかなか、社員の方から「これをやってみたい」という要望が出てもすぐに実現させてあげるのは難しいと思うのですが…。
最近は常にマスクをつけた生活で、耳が痛くなる人も多いと思うんです。今回キャンプギアを製作した彼から、耳紐でマスクを固定するのではなく、ワイヤーを利用して固定したら耳が痛くなくなるんじゃないか、とアイディアが出てきて。形にしてみたい、コストもあまりかけずにできそう、とのことだったので製作をお願いしました。完成したものは工場見学に来たお客さんに買ってもらったり、SNSで広報したりして好評でした。そのような成功実績があったこともあり、チャレンジしやすかったのかなと思います。
社員が自ら「これをやってみたい」と言ってくれる声を無駄にはしたくないですね。
――気軽にチャレンジさせてくれる雰囲気があるんですね。
私はカレーをキッチンカーで売っていたのですが、そういう風に直接お客さんと触れ合う仕事が製造現場の社員にもあるといいなと思っていたんです。使用感や、ここが良かった、ここが悪かった、という声が直接聞けるのは、ものづくりをしている人にはすごくやりがいがあることで。ばねを製造する社員には、買っていただいているお客さんの声が直接届くことはほとんどないんです。何に使われているかよく分からない、ということすらあります。そういったことを考えると、自分の作ったものを直接お客さんに手に取ってもらって、よかった、という声が聞けるだけでもやりがいがあると思うし本人たちも楽しいと言ってくれています。
――失敗することはないのでしょうか。
失敗することもあります。以前小さな規模の展示会に出たのですが、全く人が来なくて(笑)。
展示会は選ばないといけないな、というのを勉強しました。だから来年は大きな規模の展示会に出たいね、と話しているので反省を次に活かしている感じはあります。
なかなか全部が全部成功することは少ないので、いろんなものにチャレンジしてもらって、よかったものを残していくという感じです。
社員の方にはもっと失敗してほしいと思っています。何か始めないと失敗できないじゃないですか。まずは「始める」というところからやってほしいですね。失敗を皆さん怖がりますが(笑)、臆せずにチャレンジしてほしいです。
失敗を怖がる気持ちは誰しもが同じで、まずは始めること。始めなければ成功はない、と話す沢根社長はまさに浜松の「やらまいか精神」を体現しています。
後編では、先代から築かれてきたという「腹八分目経営」について詳しくお聞きします。
(※1)NORAHOLIC(ノラホリック)HP:https://nora-holic.com/
後編へ続く