人2021.02.16
人と人をつなぐフリーライブで音楽あふれる街に[後編]はまあこばこ/藤根政幸さん・ボンゴさん
~きっかけは、作り出すもの~
アーティストを応援し、音楽のまち・浜松の活性化も視野に入れた活動を展開する「はまあこばこ」。後半ではフリーライブに対する反響や若いアーティストを発掘するための取り組み、さらに将来の展望などについてお話を伺っていきます。
―― フリーライブの会場は、どこを選んでこられたんですか?
(藤根) 浜松駅のバスターミナル地下広場やTHE GATE Hamamatsu、クリエート浜松、あいホール、地域情報センターなどです。
(ボンゴ) 会場の利用には街中のOKステージ(※)も使わせてもらっています。ゲリラライブではなく、正式な使用許可を取った上でライブをやれるのはありがたいと思います。ただ、そういった場所を借りるには多くの場合費用がかかります。ですので、出演者を集めて制作したはまあこばこオリジナルのCDやグッズを販売して、その売り上げを充てています。
―― CDを制作するとなると、ライブとは別の苦労もあったのでは?
(藤根) 知り合いのレコーディングエンジニアから「活動を支援したい」と申し出をいただいたことがきっかけでした。音は完全にプロの音です。
(ボンゴ) レコーディング経験のないアーティストも多かったですけど、実際のレコーディング現場を知ってもらいたかったですからね。
(藤根) CDジャケットデザインは、私のライブ仲間の手によるもの。みんなの思いが詰まったアルバムです。参加してくれたアーティストがこの経験をもとに、自分のCDを出すきっかけになればと思いますね。
▲「CD制作は若いアーティストに貴重な体験になったはず」と藤根さんは語る
―― 当初、サポートしていた崎山蒼志さんや諭吉佳作/menさんは、それぞれ活動を始めるようになりました。今、彼らに続く新しいアーティストは生まれてきているんでしょうか?
(藤根) 私たちも新しいアーティストを発掘するために、2019年3月に「金の卵箱コンテスト」を開催しました。出場資格は10歳から23歳という枠を設けました。その時にグランプリを獲ったのが、はるかぜというアーティストです。2020年には第二回目を予定していたのですが、新型コロナウイルスの影響で決勝ライブが延期となり、本当に残念でした。しかし、第2第3の若い才能をなんとか発掘したいとは思いますね。
(ボンゴ) 2019年だけでも54組ものアーティストが私たちのライブに出てくれています。そういった中から新たな才能が世の中に出てくれればと思いますね。
▲第1回 金の卵箱コンテスト授賞式の様子
―― 次第にはまあこばこが有名になってきて、ライブ出演を目指す若い人も増えてきているのでは?
(ボンゴ) 地元である浜松の高校生の子から出演したいと連絡をもらうことはありますね。で、驚いたのは、東京のアーティストから「はまあこばこに出たい」という依頼があったことですね。
(藤根) 私たちの世代からすれば、音楽の聖地といえば武道館ですけど、はまあこばこのステージをちょっとした聖地のように思ってくれる人が出てきているというのは、驚きでもあり、嬉しいことでもありますね。
―― 実際に活動してみて、浜松の街はライブ会場としてはいかがですか?
(ボンゴ) 浜松って他の土地に比べてフリーライブに寛容だと思いますね。他の街ではすぐにライブを止められたり、禁止になることも多いようですけど、浜松はおおらか。これまで目立ったトラブルもなく、自由にやらせてもらっています。
―― はまあこばこの活動を通して、浜松の街そのものが変化したとか、街が後押ししてくれているなと感じることはありますか?
(ボンゴ) 最近、我々のライブに足を運んでくれるようになった方から「こういう場があったんだ」とか「週末の楽しみが増えた」と言っていただくことがあります。中には「街中に音楽が鳴っているのはいいね」とも。少しは音楽の街に近づいたのかなと思いますね。
(藤根) お客さんの「ありがとう」の言葉と笑顔は、最高の褒め言葉ですね。「この時間をありがとう」と言われたときの嬉しさったらないですよ! ただ、浜松は吹奏楽やオーケストラのレベルが高く、全国的に音楽の街だと知られているにも関わらず、ポップスやロックに関してはまだ弱いと感じる部分もあります。もっとポップスのライブに足を運んでくれる人が増えればと思います。その一方で、昨年からのコロナ禍でライブ自体、思うようにできなくなりました。その対策もあって、去年からYouTubeに私たちのチャンネル「はまあこすたじお」を開設しました。ライブ配信という形でも活動できたらと思っています。そして、私たちのフリーライブやライブ配信で興味を持ってくれたお客さんたちがライブハウスに足を運ぶお手伝いもしたいですね。やはり、地元のライブハウスが元気でなければ、音楽があふれる街づくりなんてできないですからね。
―― 今後の展開はどのようにお考えですか?
(ボンゴ) この活動を通して思うのは、アーティストが羽ばたくにはきっかけが必要なんだということです。これからもはまあこばこのきっかけづくりとしての役割は変わらないですし、浜松の才能あるアーティストを世に送り出すための活動を続けていきたいですね。
(藤根) 浜松は古くからの楽器の街であって、その歴史は他の街にはない文化を育んでいると思うんですね。はまあこばこはその文化が育てた才能を世の中に広めるための場であり、それ以上でもそれ以下でもないんだと思います。あくまでもアーティストとお客さんのかけはしというか、人と人をつなぐ場であればいいと思っています。
▲もっとアコースティックライブの裾野を広げたいと語る二人
若いアーティストたちの活動の場を作ること、浜松を音楽があふれる街にすること、地元で活動するアーティストを応援するという3本柱のもと活動するはまあこばこ。ライブ活動が反響を呼ぶようになった今でも、「自分たちも一緒に楽しむ」姿勢を忘れず、気負わずに話をするお二人の姿に、はまあこばこが広く支持される理由があるように思えました。
はまあこばこ
浜松の街中でフリーライブ開催を中心とした活動を行うボランティアグループ。若いアーティストの活動場所を提供し、才能ある地元のアーティストを広く知ってもらうことと浜松の街に日常的に音楽が流れていることを目標に活動を行っている。
Twitter @hamaakobako
※OKステージ:浜松の“音楽愛好情報”を提供するはままつミュージックバンクのサービスのひとつ。浜松市内で演奏可能なスポットを案内している。利用申込みも可能。