地域資源2018.01.11
シャッター通りに集う人たち 砂山銀座サザンクロス商店街
今、浜松で起きている面白いこと。
まだ、小さなムーブメントかもしれないけれど、
なぜか惹きつけられてしまう、不思議な魅力がある。
その秘密を探ってみると、「創造都市・浜松」の明日のカケラが見えてくるかもしれない。
〜あなたが応援したい人は、誰ですか?〜
JR浜松駅から南へ歩いて3分ほど歩いた先に、浜松で唯一のアーケード商店街として知られる「砂山銀座サザンクロス商店街」が見えてきます。昨今、商店街の衰退が全国規模での社会問題であるなか、ここサザンクロス商店街では最近「砂山2525(にこにこ)マルシェ」や「サザンクロスほしの市」などのマーケットが開催されているほか、演劇祭やフェスティバルの会場としても活用されており、市民が文化を発信し、交流する場となりつつあります。
イベントを目当てに多くの人が商店街を訪れ、その様子が新聞やネットなどでも取り上げられるなど、話題のスポットとして注目を集めています。
こうした現象の背景には、商店街活性化につながる創造的な取り組みが隠されているのではないかと思い、商店街を訪ねてみました。
▲サザンクロス商店街入口
かつてのにぎわいを取り戻したい
▲「まるい園茶舗」代表取締役の鈴木勝彦さん
はじめに、商店会の会長であり、「まるい園茶舗」代表取締役でもある鈴木勝彦さんにお話を伺いました。
ーー今年はさまざまなイベントが行われたことで、商店街が注目のスポットになってきているのでは、と思いますが、どのように思われますか?
(鈴木)商店街がにぎやかになるのは、うれしいですね。年末にかけ期間限定のクリスマスマーケットが行われたり、聖隷クリストファー大学が空き店舗を活用して「まちなかリハ室『Re-暮創(りくらそう)』」をオープンさせたり、今もさまざまな活動が行われています。イベントがきっかけになり、サザンクロスで面白いことができそうと感じてくれる方も多いように思います。
▲「まちなかリハ室『Re-暮創(りくらそう)』」
ーーここでお店をしたいという人も出てきそうですね。
(鈴木)うれしいことに、そのような声をいただいています。でも、シャッターが閉じ、お店は廃業しているものの、住居として使っているため、簡単に貸すことができないというジレンマがあります。また、業種によってはイベントの集客が店舗の売上げにつながらないこともあり、複雑な思いのお店があるのも事実です。ただ、イベントをきっかけに、商店街のあり方、店舗どうしの関わり方を考えるきっかけになってくれればと思います。
▲昭和43年 アーケード完成時のサザンクロス商店街
ーーかつて、サザンクロス商店街は、浜松の人にとってどのような存在だったのですか?
(鈴木)昭和初期には呉服店や用品店などを中心に多くの人でにぎわっていたと聞いています。浜松市南部の人たちにとって、買い物といえば砂山銀座という存在でした。1979年に東海道本線が高架化したことで人の流れが駅北に移り、人通りが少なくなっていきました。最盛期には30店舗ほどありましたが、今は11店舗になりました。
▲サザンクロス朝市の様子
ーー近年は、毎月第1・3土曜日に商店会主催で朝市を開催していますね。
(鈴木)2000年に始まったので、もう17年になります。かつては成功した朝市として静岡県から表彰されたこともありましたが、ここ数年はソラモや郊外でもマーケットが開催され、お客さんだけでなく出店者も減少傾向でした。もう止めたらと言う人もいますが、いろんな方からご紹介いただき、個性豊かな出店者さん、高校生や大学生も出店してくれるようになりました。がんばって継続してきたからこそ、定例イベントとして広く知られるようになったと思います。
ーー今後の展望を教えてください。
(鈴木)もう一度あのにぎわいを取り戻したいですし、1軒でもシャッターを開けたいですね。僕が子どもの頃はにぎやかな商店街であり、遊びの場でもあり、たくさんの人が集う場所でした。他力本願かもしれませんが、イベントを開催し、誘致して、にぎわいをつくっていきたいですね。
学生がまちと関われる場所
続いて訪ねたのは、「ハロー砂山」代表の山田将人さん。静岡大学情報学部の4年生で、サザンクロス商店街を元気にしたいと、2年前から8名のメンバーと活動を続け、サザンクロス商店街の朝市に出店し、「とうもんの里」(※1)の野菜や商品を販売しています。
▲ハロー砂山代表、山田将人さん。メンバーは4年生が多く、この活動を次年度に続けていくことが今後の課題。現在、メンバー募集中。
ーー朝市に出店しようと思ったきっかけを教えてください。
(山田さん)もともと、サザンクロス商店街に学生を集めたいと思っていました。まずは、商店街の人と仲良くなろうと思って出店しました。最初は出店するだけで必死でしたが、商店街の方や朝市に来るお客さんたちに助けられ、最近では何とか居場所ができてきたかぁ、なんて思えるようになりました。
ーー近年いろいろなイベントが行われるようになって、サザンクロス商店街も以前よりにぎやかになったと思いますが、どう感じますか?
(山田さん)やっぱりうれしいですね。今日もいろいろな人がいっぱい来てくれて。でもイベントなどがないと普段は人が少ない。そこで僕たちはこの夏に、小中学生の夏休みの宿題を私たち大学生がお手伝いする「砂山楽校」というものを実験的にやってみました。実際に半日、楽しく宿題をしながら遊びました。ほとんど遊んでばかりでしたが(笑)
ーー「砂山楽校」を開催された感想を教えてください。
(山田さん)サザンクロス商店街はアーケードがあって、車も通らない。子どもたちと遊ぶのにとてもいい場所だと分かりました。この企画はこれから朝市のときにもやっていきたいと思っています。今度はちゃんと勉強をお手伝いします(笑)
ーーサザンクロス商店街の魅力はどんなところですか?
(山田さん)人だと思います。「まるい園茶舗」の鈴木さんをはじめ、商店街の人たち、朝市に来てくれるおばあちゃん、おじいちゃんたち。普通の学生生活ではなかなか出会うことのない人たちに会えるのがいいですね。「砂山楽校」に子どもたちがたくさん来てくれれば、もっと楽しい場所になっていく気がします。
※1 とうもんの里/旧大須賀町にある田園空間博物館とうもんの里を中心に地域の農業や農村文化を交流体験など通して伝え、守っている団体。農家のお母さんたちが中心に運営、豊かな農作物、加工食品が自慢。
ただ、この場所が好き
今年に入り、朝市とは別に多くのマーケットが開かれるようになりました。そのうちの1つが、8月4日(金)〜6(日)に行われた「砂山2525マルシェ」。クラフト作家やパンなど、食品をあつかう個人店が中心に約50店、若いファミリー層を中心に約7,000人の来場者があり、にぎやかな1日になりました。
最後に、そんな「砂山2525マルシェ」の主催者である佐々木郁恵さんにお話しを伺いました。
▲「砂山2525マルシェ」主催・佐々木郁恵さん(中央)
ーーどうしてサザンクロス商店街を会場に選んだのですか?
(佐々木さん)私は岩手県の出身なんですが、生まれ故郷にも商店街があって、そこの雰囲気に似ていたんですね。近くを通るときに「いいなぁ」なんて思いながら見ていたのですが、よく見るとシャッターだらけ。その景色にショックを受けました。なんか寂しくて。
イベントをやりたくてこの場所を選んだというわけではなく、「この場所を元気にする、人が集まる場所にしたい!」というのが先だったんです。なんか好きなんです、サザンクロスが。
ーー今はこの近くにお住まいだとお聞きしました。
(佐々木さん)そうなんです。好きで近くに引っ越してきてしまいました(笑)北寺島からなんですが。
ーーそれほど思い入れがあるということですね。
(佐々木さん)住民になってしまったからこそ、いままで「してもらいたい」と思っていたものが、「したい」という気持ちに変わり、遂には、「砂山2525マルシェ」をやってしまいました。実際にしてみると、出店された方々もお客さんたちも楽しそうに見え、とてもいい時間だったと思います。
ーーサザンクロスをどんな場所にしたいですか?
(佐々木さん)近所に住むものとして、人がいっぱいいる場所になって欲しいですね。もっと子どもが多くいて欲しい。近隣住民も高齢者が多いので、やっぱり子どもの声が聞こえるような場所がいいですね。高齢者の方もイキイキすると思います。その点では、「ハロー砂山」の「砂山楽校」には期待しています。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、みんなが集える場所になるといいですね。
(まとめ)
「まるい園茶舗」の鈴木さんは、「商店街はおせっかいな地域」だと言いました。裏をかえせば相手のことを気にかける、思いやる場所と言えそうです。高齢化していく商店街とこれからの世代をつなげる役割を果たそうとする「ハロー砂山」。商店街に活気を取り戻したいという思いから始まった「砂山2525マルシェ」。本文には登場しませんでしたが、今年11月に第一回目が開催された「浜松サザンクロスほしの市」の実行委員の方は、始めた理由を「がんばっている『まるい園茶舗』の鈴木さんを応援したかったから」と話してくれました。図らずも行動を起こしたのは、外から来た人たちでした。そしておせっかいの気持ちを受け入れたサザンクロス商店街。お互いの気持ちが通い合い、さらに多くの人をつなげているのが、今のサザンクロス商店街の魅力なのかもしれません。
▲「クリスマスマーケット」2017年12月25日までのシェアショップ