人2019.08.30
ハングリー精神が、自分の道を切り拓く[後編]マルモリファーム / 森下晃行さん
~他者からどんなことを学びますか~
慣行農法とは違う柿の栽培方法を学び、ビジネス的視点を取り入れたことで柿農園を軌道に乗せた森下さんは、新たにとうもろこしを栽培することを決めました。後編では貪欲に学び続ける森下さんの考えを伺います。
ーーとうもろこしを始めるにあたって、どのようなことを考えていたのですか?
(森下)少ない労力で、どう利益を生むかということです。僕の事業は制約理論をベースにしていて、業界にとっての当たり前を疑ってみることから始めます。とうもろこしの場合でいうと、朝に収穫したものを、朝のうちに売り切るのが一般的。でもその方法だと、100万本売りたいとなっても、実際には難しい。だったら朝に収穫して、朝に販売しなくてもいい方法を考えるわけです。
それで鮮度を保てる方法がないか調べたところ、一週間にわたって高い鮮度を維持できる最新技術を見つけました。それを使い、今年は7万本を売り切ることができました。
▲贈答品だけでなく、直売所でも販売している
ーーそういった理論はどうやって学ぶんですか?
(森下)「マネジメントゲーム」というものをご存知ですか?SONYが1976年に開発した、マネジメントのノウハウを学び、経営者を育成するためのプログラムです。ゲームを通じて工場の経営体験ができます。僕は2日間の研修でこのゲームに取り組みましたが、計算ばかりで頭がおかしくなりました(笑)。
初めて参加したときはビリから2番目のボロ負け。もう、悔しくて悔しくて。次に参加したときは、他のプレイヤーの振る舞いを研究し、講師に個人質問するなど、めちゃくちゃ勉強して、何とか優勝することができました。言葉にすると簡単そうですが、30〜40人ほどが参加するので難しいんですよ。ゲームですが倒産も経験できるし、市場原理を学ぶことができました。
▲マネジメントゲームでは2回目の参加で見事優勝を勝ち取る
(森下)差別化という点では異業種の方と会うように心掛けていて、今年から浜松ロータリークラブに入会しました。この会には企業の会長さんや、病院の院長など、そうそうたる人が集まっています。彼らと話をしているだけで、考え方や思考の過程がとても勉強になります。
ゴルフが好きで、スコアは平均80台が出るレベル。アマチュアの大会にも出場しています。ゴルフはとても勉強になって、OBするとガタガタと崩れる人もいれば、負けているのに、その場を自分の空気にしてしまって勝ちに転じる人もいる。戦略も必要だし、メンタルも強くないといけない。経営と似ていますよね。学ぶ姿勢があれば、どこからでも学ぶことができます。
ーーいろいろな業種の人と会う以外にも大事にしていることはありますか?
(森下)勉強はめちゃめちゃしますよ。8月はしっかり休みを取って、2週間は読書する時間にあてています。マーケティングに関しては海外の本を読むことが多いですね。日本の本だと事例が日本なので、知識を得ても勝てないんですよ。畑での作業中には、オーディオブックをよく聞いています。難しい本でも1日3時間、300回くらい聞くとさすがに頭に入り、消化できますよ(笑)
ーー独立して5年。農業は楽しいですか?
(森下)農業というよりビジネスが楽しいかな。戦略を絞って、その戦略にあった戦術やスキームをたて、アイデアを出し、どうやって人を集め、システムを構築していくか考えるのが楽しいです。
マーケティングって、セールスを不要にすることだから、Appleのように一流のマーケティング技術があれば、できることがもっと広がるはず。先の先を見すえて行動することで、応援してくれる人も増えました。人と違うことをすることを恐れずに、自分の夢を叶えていきたいですね。
人間は変わることが苦手な生きもの。既存の枠組を壊そうとする人は疎まれることもあるけれど、その先には新しい可能性が広がっていて、嫌われる勇気を持って進んだ者にしか見えない世界がある。森下さんの話がそのことに気付かせてくれました。
マルモリファーム 代表 森下 晃行
浜松市浜北区出身。高校卒業後、美容業界で活躍するも退職。オーストラリアを2カ月ほど旅し、工場に勤務した後、妻の実家である足立柿園で働く。4年の修行を経て、独立。常識や慣例を疑う手法が注目を集めている。柿ととうもろこしは贈答用として人気。趣味はゴルフ、バスケットボール。2児のパパでもある。
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