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2022.12.09

新たな分野開拓の鍵は熱意とチャレンジ精神[前編]/共和レザー株式会社 久保賢治さん 中村美由紀さん

浜松市南区にある「共和レザー株式会社」は、国内トップシェアを誇る自動車内装材メーカーです。2021年5月、個人消費者向け事業の一環で、自社ブランドECサイト「エシカルレザーSobagni(ソバニ)」を開設しました。Sobagniでは自動車用合成皮革を活用したバッグや文具など様々な製品を取り揃えています。また、2022年7月にはりんごの絞りかすを活用し、植物由来の合成皮革「ビーガンレザー」を開発しました。

自動車内装材メーカーとしてトップシェアを誇る一方で、新たにファッションブランドを立ち上げ、ビーガンレザーの開発に挑戦した経緯をお聞きしました。

▲(左)ブランド企画部部長 中村美由紀さん(右)開発部 部長 久保賢治さん

 

――自動車内装材で国内においてトップシェアを誇る一方で、ファッションブランド「Sobagni」を立ち上げられた経緯を教えてください。

共和レザーは、自動車内装材をメインに作っており、国内トップシェアを誇っています。なかなか一般の人には伝わりにくいのですが、自動車内装材、自動車のシートは、非常に質の高い素材を使用しているんです。夏の灼熱の中でも、冬の厳しい寒さの中でも10年以上大きな変化を起こさない素材、そして燃えにくい。これらを満たしているものが自動車のシートに使用されます。

一方で、普段使いするバッグなどに使われる合成皮革は、2~3年経つとボロボロになってしまいがちです。バッグの持ち手の部分とか、結構すぐに傷んでしまいますよね。

もちろん自動車のシートと普段使いするバッグの素材ではそもそもの値段が異なるのですが、自動車シートの素材の良さを知っているからこそ、共和レザーの合成皮革を多くの人に知ってもらい、合成皮革のイメージを変えたい、と思い始めました。有志の社員同士で「何か自分たちにできることはないだろうか…」と話し合いを重ねることからスタート。

まずは共和レザーの素材で作ったノベルティを配り、お客様に実際に手に触れていただく機会を作りました。ノベルティの配付を続けていく中でだんだんと反響があり、他社からも「うちの会社のノベルティも作ってほしい」や、「この素材を使ってみたい」という声がかかるようになりました。

こうした声を聞き、もっと多くの方々に共和レザーの素材を知ってほしいという想いが生まれ、身の回りのものを製造・販売するブランドを立ち上げることとしました。

 

――確かに、自動車のシートはあまり劣化するイメージがありません。

ジャングルテストというものがあります。人工的に湿度95%、温度70度という過酷な状況を作り、その環境に放置して10年間相当分、劣化を促進させる試験です。自動車内装材を使用した共和レザーのカバンと、他社のカバンをジャングルテストした結果を比べると、耐久性の違いが顕著に現れています。

▲他社のカバン

 

▲共和レザーのカバン

 

長く使えるということは、廃棄が少なくなるということなのでSDGsにも繋がります。一部の商品は、廃棄する予定のレザーをアップサイクルしていて、ごみを減らしつつ商品開発を進め新しいものに生まれ変わらせる取組みをしています。

また、Sobagniでは、地域の皆様と一緒に何か行うことで地域への貢献、Sobagniや共和レザーの認知度UPを図りたいという想いもあります。

コミュニティスクールという、学校の教育に地域や企業が関わることで「読み書きの授業だけでは得られない教育機会を!」という活動に賛同し、小学校のクラブ活動でワークショップをしました。子どもたちにイラストを描いてもらい、それを共和レザーの素材(エシカルレザー)にプリントし、ペンケースにするというものです。自分の描いたイラストが実際に使える物になることで子どもたちにはとても喜んでもらえました。長持ちする素材なので、「一生使える!」という声もありました。

▲写真は社員の方による見本品。

 

 

 

▲実際のコミュニティスクールの様子

 

▲自動車にも使われているエシカルレザーで作った子供向けのサブバッグ。びっくりするほど軽くて、雨や傷にも強い。浜松の名所・名物が可愛いイラストでびっしり描かれています。

浜松の名所・名物をおうちの方と探していただきたい、浜松を楽しく知りながら大事に使っていただきたい、という想いが込められています。

線画なので、高学年のお子様にもお使いいただけ、最後はマジックなどで色を付けてパネルにすればインテリアとしても活躍します。

 

 

――お客様から「Sobagni」の商品に対する反応はありましたか。

半年くらい使用されたお客様から、「水に濡れても素材がへこたれないので雨を気にしなくていい」、「痛みやすい持ち手の部分が全然劣化しない」という感想をいただきました。素材の良さを実感していただけているようで嬉しいです。

また、「Sobagni」のレザーはアニマルフリーということもあり、動物の革を身につけることに抵抗がある方からも支持されています。

個人的には、白色の製品をオススメしています。というのも、白色というとどんな素材でも汚れがつきやすいイメージがあるため、なかなか選ばれにくいと思うのですが、Sobagniの素材は汚れがつきにくい加工をしているので、長いこと「きれいなまま」ご使用いただけます。

工業製品なので、環境に悪いのでは…と思われる方もおりますが、厳しい管理の中、環境負荷物質を排出しない生産をしています。

 

▲白色の素材をベースにしたSobagniのコースター

 

 

▲マウスパッド

Sobagniというブランド名は、実はあなたの「そばに」、いつもあなたの「そばに」、といった日本語の「そばに」と、イタリア語のsogni(ソーニ:「たくさんの夢」という意味)をかけあわせた造語で2つの意味が込められています。

 

Sobagniについて中村部長にお話いただきました。自社製品の質の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいという想いから、社員同士で様々な案を出し合い、ノベルティからスタートし新たなブランドの立ち上げにまでつなげた熱い気持ちとチャレンジ精神を非常に強く感じました。

後編では、りんごの絞りかすを活用して、植物由来の合成皮革「ビーガンレザー」を開発したときのお話をお伺いします。

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