2015.09.07
音楽文化交流都市・ボローニャから!
今回は、「創造都市」という視点から、「ボローニャと音楽」についてご紹介いたします。
本年度5月末に浜松市は、音楽文化交流都市であり、また、ユネスコ創造都市ネットワークの音楽分野加盟都市でもあるボローニャ市(イタリア)と音楽教育に関する人材交流を行いました。ボローニャ市はイタリア共和国北部に位置し、中世から商業や学術が盛んで、国内有数の文化都市へと発展しました。今回の交流では「音楽」に焦点を当て、創造都市としての共通点や違い、互いの発展の可能性などについて意見を交わしました。浜松市からは学校教育・社会教育の専門人材(職員)をボローニャ市に派遣し、現地の教育機関や、学校教育の現場等に伺い、音楽教育の現状を視察するとともに、同市の音楽行政の責任者と音楽教育に関する意見交換を行いました。
ボローニャでは、行政、関係する官民のそれぞれの機関や団体が連携して音楽教育を振興しており、年齢や環境に関わらず、音楽を身近に感じ楽しむことを学校教育・社会教育の共通の目的としています。例えば、学校で小学生向けに音楽ワークショップを実践している団体は、子どもたちに体を動かして音楽を表現するように促し楽しみながら学習できるように工夫をしたり、ボローニャ市立音楽博物館では、エデュケーターが協力し合い展示室を活用して子ども向けのワークショップを開催したりしています。
また、民間団体の企画するオペラの鑑賞プログラムでは、行政の補助と民間団体の寄付を募ることで、より多くの市民に手頃な価格でオペラを鑑賞できるものとしています。昼の講演は授業の一環として活用したり、夜の部は家族で見学できるよう工夫したりする仕組みが確立されています。
同市内の民間音楽教育団体である幼児音楽教育センター(C.E.M.I)では、スズキ・メソードという日本発祥の音楽教育手法を採り入れています。プロの演奏家を育成するのではなく、音楽を通して家族といる時間を長くすること、音楽を通してより良い生き方を目指すことを目的としています。
このようにボローニャ市では、様々な手法を導入して「子どもと音楽」、「社会と音楽」を繋げることに取り組み、関係する人々が同じ使命感を持って活動をしています。
また、ボローニャ市の経済構造にも文化が発展してきた大きな要因があります。ボローニャには「ボローニャ式」という、文化やスポーツなどへの独自の支援制度が存在します。市民が新しい文化活動等を行おうとするとき、自分たちで組織体をつくります。そして行政はその組織体が軌道に乗るまで、資金援助等を行います。また、使用しなくなった市有の建物等を文化活動の場として提供したりするなどの支援もしています。メセナ(企業が主として資金を提供して文化や芸術活動を支援すること)においては、金融機関では利益の50%を地域の文化活動に使い、還元するように法律で定められています。国、地方行政、民間企業、地域が有機的に連携して一体となり、文化を創造しています。古き良きものを維持しながら、新しいものにも挑戦する人々のマインド。これは、浜松の人々が「やってみよう!」「やってやろうじゃないか!」と新しいことに挑戦し続けてきた「やらまいか精神」と通ずるものがあります。
浜松市とボローニャ市間では、各々の音楽教育における背景は異なるものの、互いの有する音楽に関する教育・学術・専門的人材の交流が始まっています。
「ボローニャ方式」×「やらまいか精神」。今後も音楽分野にとどまらない両市の文化交流の発展が期待されます。
音楽博物館での現役演奏家などによる学校向けワークショップの様子
250年の歴史を誇るイタリアを代表する歌劇場のひとつ、ボローニャ市立劇場での子ども向け「魔笛」鑑賞教室の様子
G.B.マルティーニ音楽院代表ドナテッラ・ピエリ氏(Donatella Pieri)による音楽院施設内の案内や、音楽教育部教育責任者のマウリツィオ・ピサーティ氏(Maurizio Pisati 写真右)や基礎教育責任者であるアントネッロ・ファルッリ氏(Antonello Farulli 写真左)との意見交換