人2021.10.28
浜松を代表する食文化“餃子”の伝道師に[前編]東亜工業株式会社/請井正さん
浜松でおすすめの食べ物といえば?と聞かれたら、皆さんは何を思い浮かべますか?「うなぎ!みかん!○○○パイ!」沢山のおすすめが挙がりそうです。
では「浜松のソウルフードといえば?」と聞かれたらどうでしょう、きっと多くの方が「餃子!」と答えるのではないでしょうか。
浜松が日本で一、二を争う餃子のまちであることは有名ですが、その餃子を自動で作る機械を浜松の企業が製造していることは、ご存じでしたでしょうか?実は国内・海外ともにトップのシェアを誇るその企業が、東亜工業株式会社です。
北区三方原町の本社で、社長の請井正さんにお話を伺いました。
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東亜工業株式会社の前身である『東亜工業所』が設立されたのは1963年。当初は自動車会社の下請けとして自動車部品の金型を製作していました。高度経済成長の波に乗り事業は順調でしたが「先代は下請けではなく、自社製品を開発して発信したいという、ものづくりに対しての強い思いがあったようです。ちょうどその時、ある食品会社社長の誘いで見学した餃子製造機が、餃子に興味をもったきっかけでした。」本業の傍らで研究開発を続けることおよそ6年、ついに1975年に初号機『T-8』大型自動餃子製造機を完成させ、自社製品として発売します。
▲1975年当時の試作機
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大型自動餃子製造機はその後も改良を重ね、後継機も発売される一方、1988年には個人商店でも設置可能な『小型餃子製造機』を発売。お店の味を忠実に再現するこの機械は、瞬く間に日本中の飲食店や食料品店に受け入れられました。
「それぞれのお店や会社ごとに理想とされる餃子のイメージがあります。餃子なんてみんな一緒じゃないのと、味付けだけ、中身だけ工夫してあとはみんな同じだと思われがちですが、それぞれ個性があって本当に奥が深いです。餃子の大きさも違えば、皮の厚みや、皮の柔らかさ硬さもお店ごとに違います。」ふたつとないお客様の餃子の味や食感を、1台の機械で再現するのは簡単なことではありません。「不可能に近いことですが、やはりお客様は自身のお店ののれんを守りたい、お店の味に近づけたいと口を揃えておっしゃるので。わたしたちは、機械の契約前の段階に相当時間をかけています。」
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一店一店オーダーメイドの機械を製作するには、まずお店のオーナーの気持ちをヒアリングすることから始まります。その後、現地へ足を運び、実際に餃子を目で見て舌で味わい「そういう作業をした上で次に行うのが餃子の数値化です。大きさ、重量、皮の直径、皮の厚み、水分量、具の量や比率などそういったものを全て、1グラム単位で計測し数値化します。それを持ち帰ってきて、あとは長年の経験と職人の技術をかけていきます。」こうしてお店の味を正確に再現する1台が完成します。
▲ボタン一つで1時間に1,500個の餃子を包むことができる「餃子革命」
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順調に販売台数を増やしてきた東亜工業ですが、2010年頃からその需要に変化が見えてきたといいます。「市場が段々と飽和状態になってきました。今までの売り方では将来的に先細っていく可能性がある。国内だけを相手にしていては厳しいと感じ、海外にも販路を広げました。当社の海外売上はコロナ前の2019年で35%。2010年頃は2ケタいかない程でした。海外の展示会やフェアにも参加して、これは当然すすめていく。それからやはり主力は7割の国内売上です。この売上をどうやって今後も確保し、拡大していくのか。これを同時に考えた時に、今まで通りハードを提供するだけではなかなか難しいと思いました。市場を活性化させ、それによって新しいニーズや、新しい食文化を生み出す必要がある。」市場の飽和というピンチが、会社にとっての転機になります。
「わたしは餃子にすごく可能性を感じていて、もっといろんな食べ方があって、いろんな餃子があっていいと思っていまして。ただ、一般的な皆さんの餃子のイメージとはちょっとずれているので、わたしのこの発想はなかなか受け入れられない。そこを打ち破らなくちゃいけないと思いました。そこにまた新たな市場はできていく。そういうつもりで始めたのが飲食事業部、ユーエスフーズという別会社になります。」
〔後編につづく〕
▲餃子専門店「浜太郎」で提供される餃子定食。全国から仕入れた厳選素材と、毎朝お店で皮作りから始めるという「作りたてのおいしさ」がこだわり